求職者の応募(推薦)に対して求人企業が内定を提示し、求職者がその内定を承諾すると、その時点で内定が成立したことになります。そして、その内定を求人企業側から取り消すのが、いわゆる「内定取り消し」です。内定取り消しは簡単にできるものではなく、場合によってはさまざまなリスクを生むこともあります。
内定取り消しは「解雇」と同じ
内定は、正確には「始期付解約権留保付労働契約」とも言われています。これは「契約開始日が決まっており、求人企業側が内定を取り消す権限を一時的に保留している労働契約」という意味です。
「内定を取り消す権限を持っているのなら、自由に取り消してもいいのでは?」と思われるかもしれませんが、労働契約である以上、その取り消しは法的には解雇に相当します。そして解雇と同様に、その行使には厳しい条件が定められています。
まず、大まかにまとめると、内定取り消しが認められるのは以下の1・2の両方を満たす場合です。
内定取り消しの理由が、採用内定当時に知ることができない、もしくは知ることが期待できないような事実であること。
その事実が、内定取り消しの理由として客観的に合理的かつ社会通念上相当と認められること。
つまり、内定取り消しの理由が、内定オファー当時には知ることができなかった事実に基づいており、かつ無関係の第三者が見ても「内定取り消しはやむを得ない」と言えるほど合理的でなければなりません。
逆に言えば、そうでなければ内定取り消しは”不可”です。例えば、通常下記のケースは内定取り消しの理由にはなりません。
求職者を配属できる案件がなくなった。
採用の定員に達した。
入社手続きに関する連絡のレスポンスが遅い。
入社前の懇親会等で周囲と打ち解けなかった。
こうした理由で内定取り消しを行なっても無効となりますし、場合によっては求職者から損害賠償を請求されるリスクや、会社の評判・信用を下げるリスクを負います。内定取り消しをする際には、本当にそれしか打つ手がないのかを考える必要があります。
内定取り消しが認められやすい具体例
一般的に、以下の1〜6のようなケースであれば、内定取り消しできる可能性があると言われています。
能力や経歴に関する重大な詐称
内定後の犯罪行為、反社会的行為
内定後の重大な病気・怪我
留年(学校を卒業できない)
業務に必要な資格を取得できなかった
深刻な経営状況の悪化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1:能力や経歴に関する重大な詐称
「選考中、入社後に必要不可欠な●●スキル・▲▲の経験を保有していると聞いていたのに、実はそれが虚偽だった」という場合、内定取り消しが認められる可能性があります。また、履歴書や卒業証明書、資格証明書などの書類を偽造した場合も、偽造の程度によっては内定取り消しが認められる可能性があります。
2:内定後の犯罪行為、反社会的行為
内定後に求職者が、企業イメージの大幅なダウンにつながるほどの犯罪行為をした場合、内定取り消しが認められることがあります。また犯罪でなくても、反社会勢力とのつながりが発覚したり、迷惑行為・誹謗中傷(ネット上も含む)などを行なった場合も、同様に内定取り消しが認められることがあります。
3:内定後の重大な病気・怪我
内定後に、求職者が業務を遂行できないほどの病気・怪我を負った場合は、内定取り消しが認められることがあります。内定前から求人企業が病気・怪我を知っていた場合には、内定を取り消せません。
4:留年により学校を卒業できなかった
新卒採用において、留年で学校を卒業できなかった場合は、内定取り消しもやむを得ないと認められることがあります。
5:業務に必要な資格を取得できなかった
タクシー運転手の仕事で、入社までに自動車運転免許が必須
経理職の仕事で、入社までに日商簿記3級合格が必須
といったケースで、入社までにそれらの資格を取得できなかった場合、業務が遂行できないとして内定取り消しが認められる可能性があります。しかし、業務と無関係の資格であれば、「資格がなくても業務が可能」と判断され、内定取り消しが認められないケースもあります。
6:深刻な経営状況の悪化
経営状況の悪化を理由とした企業都合の内定取り消しは、整理解雇(いわゆる「リストラ」)に相当します。そのため、単なる解雇よりも厳しい条件が求められます。具体的には以下の4要件を満たす必要があります。
整理解雇がやむを得ないほどの経営危機に陥っている。
整理解雇を回避するために最善を尽くした(役員報酬の削減や希望退職者の募集、事業の縮小など)。
整理解雇の対象者を選定するための合理的な基準を策定し、かつ公正に運用した。
整理解雇の対象者に対して、整理解雇の必要性等について説明を尽くし、納得を得るよう努めた。
上記4点を満たした場合、経営状況悪化を理由とした内定取り消しが認められる可能性があります。
当然ながら、「上記1〜6のどれかを満たせば確実に内定取り消しが可能」、というわけではありません。裁判等を通じて、「内定後に犯罪行為をしたが、内定取り消しするほどのレベルではない」「業務に支障が出るような怪我ではないので、内定取り消しは無効」といった判断が下されることもあります。あくまでケースバイケースで考えることが大切です。
なお、内定取り消しの理由だけでなく、実際に内定取り消しを行う際にもさまざまな法令・ルールが存在します。内定取り消しに関しては、社内外の法務・労務の専門家と慎重に確認を重ねる必要があることを認識しておきましょう。
※本記事に記載の内容は、2025年2月時点のZキャリア プラットフォームの仕様・サービス内容等に基づいています。